キャンピングカーで「日本列島RVパークの旅」⑫RVパーク吉無田高原パティオ(熊本県)【連載】
キャンピングカーや車中泊仕様車でどこに泊まれるのかというと、道の駅や有料道路のパーキングを連想しがち……。でもこれらの場所は、休憩のための仮眠はオッケーでも宿泊できる場所ではありません。そこで利用したいのが、RVパーク。キャンピングカーの製造メーカーやディーラーで構成される日本RV協会が設置を進める「快適で安心して車中泊できるスペース」のことで、入浴施設やトイレ、電源設備などが備わります。実際にオートキャンパー WEB編集部が全国各地のRVパークに実際に泊まってその魅力をお伝えします。なお、2024年2月13日現在、日本全国にRVパークは413カ所ほど存在しています。
高原のさわやかな空気と美しい芝生が広がるRVパーク
熊本県といえば、日本一有名なご当地キャラ「くまモン」をはじめ、阿蘇を中心とした観光スポットはだれもが知るところ。そんな阿蘇エリア(県央エリア)の南側外輪山の裾野にある「吉無田高原」は標高約650mの位置にある高原地帯。約200年前の植林により生育した森の広さは3万50ヘクタール。さらに1日あたり1万3000トンもの水が湧き出る「吉無田水源」は熊本名水百選にも選ばれ、高原一帯を潤して野菜などが作られているほか、「アソノコギリソウ」や「アカササゲ」という希少植物の植生が確認されるなど、素朴な風景のなかに豊かな自然があふれている。今回はそんな高原にあるパークを紹介。
手作り感あふれる施設は南阿蘇旅の拠点として最適
中庭」という意味を持つ「パティオ」の名のとおり、ここは手入れの行き届いた美しい芝が自慢。区画は全部で6つあり、サイズも9×7mと大きく、区画内であればオーニングはもちろん、テントを張ることも可能(テント利用は別料金)。もちろん、焚き火の利用もできる。
パークのオーナーである福永敏夫さんは長年勤めた仕事をリタイアし、ここに移住して1人で運営。パーク内にある有料のシャワーや五右衛門風呂など、さまざまな施設も自身でコツコツと手作り。どれも趣味の域を超えた作りに驚く。また施設内には「じじぃのショットバー」があり、お酒(有料)を飲みつつ地元の話などを聞くことができる。
パークは熊本市内へのアクセスがよく、熊本城や水前寺成趣園(水前寺公園)といった市内の名勝をまわるのにも便利。またパーク周辺には動物と触れ合える「阿蘇ミルク牧場」や、ローンスキーにマウンテンバイク、化石発掘体験や天気がよければ有明海や天草の島々、普賢岳までも一望できるアクティビティプレイス「吉無田高原緑の村」もあるので、観光や遊びも充実。
ただし自然が豊かなぶん、スーパーやコンビニは近隣にはないため事前に用意しておくのがお薦め。熊本県産の野菜などが多くそろう道の駅 「大津」はパークから約18km(約30分)。スーパーなら「アメリカンファームふるさと市場」が15km(約45分)、全日食チェーン高遊原店が14km(約43分)の位置にあるので、パークに行く前に買い出ししておくといいだろう。
最寄りの温泉はエミナースに併設される「七福の湯」(熊本県上益城郡益城町田原2071-1)。大浴場やサウナ、家族風呂に岩盤浴など充実。泉質はナトリウム‐炭酸水素塩・塩化物泉(低張性・弱アルカリ性・温泉)で美肌・保湿に効果があるといわれる。営業時間は10時から22時で、利用料金は大人600円、小人(小学生)250円、幼児(3歳以上)100円
歴史もグルメもショッピングも
RVパークから熊本市内までは県道28号経由で約30km(1時間)。熊本市内にRVパークはないので、熊本城などの観光をするにもこのRVパークが便利なのだ。
あの加藤清正が城主だった名城「熊本城」。別名「銀杏城」ともいわれているが、日本の「さくら」名所100選にも選ばれているので、春に行くのもお薦め。2016年4月の熊本地震により石垣が崩落したほか、宇土櫓(うとやぐら)などの文化財建造物、大小天守などの復元建築が被災し、取材した2023年7月でも修復中だった。
熊本城と併せて訪れたいのが「水前寺成趣園」。寛永9年(1632年)、肥後細川初代藩主・細川忠利公(ただとしこう)が御茶屋を置いたのが始まりの庭園で、阿蘇の伏流水が湧き出る池を中心に緩やかな起伏の築山や浮石などが配され、四季折々の自然と庭園美を楽しめる。
ファミリーなら「阿蘇ミルク牧場」へ! 動物との触れ合いのほかバターやチーズ作り体験、レストランや土産店などもあり、1日楽しめる。夏はヒマワリ、9月下旬〜10月中旬ころまでは150万本のコスモスが咲き誇る。冬期は休園のため、営業期間を事前にチェックしておいてほしい。
「阿蘇ミルク牧場」(熊本県阿蘇郡西原村河原3944-1)
グルメでは国道57号線沿いにある道の駅「大津(おおづ)」がお薦め。バイク神社があることでも有名でライダーの聖地だ。駅内には県内一の生産量を誇る"からいも"や、からいもを使った"たい焼き"も人気。いきなり団子、辛子レンコンの実演販売、馬刺しの対面販売などもあり、自炊派なら食材の調達にぴったり。併設のレストラン"よかよか"では、阿蘇名物「あか牛」が堪能できる。
そしてショッピングならアメリカンファームふるさと市場はいかがだろうか。自社農園で栽培した新鮮な野菜や近隣農家で採れた野菜などが充実。新鮮さと安さで人気。
実際に高原の新鮮な空気を吸って調理や星空鑑賞など、充実した1日が楽しめた。夜は風や虫の声など自然の音しかない静けさ。自然豊かなパークでのんびりしたい人にはお薦めだ。