キャンピングカーで「日本列島RVパークの旅」⑲生野高原カッセルRVパーク(兵庫県)
キャンピングカーや車中泊仕様車でどこに泊まれるのかというと、道の駅や有料道路のパーキングを連想しがち……。でもこれらの場所は、休憩のための仮眠はオッケーでも宿泊できる場所ではありません。そこで利用したいのが、RVパーク。キャンピングカーの製造メーカーやディーラーで構成される日本RV協会が設置を進める「快適で安心して車中泊できるスペース」のことで、入浴施設やトイレ、電源設備などが備わります。実際にオートキャンパー WEB編集部が全国各地のRVパークに実際に泊まってその魅力をお伝えします。なお、2024年10月18日現在、日本全国にRVパークは475カ所ほど存在しています。
兵庫県の北中部、南但馬エリアが満喫できる
兵庫県は摂津・播磨・但馬・丹波・淡路という歴史も風土も異なる五国から構成されている。南は瀬戸内海、北は日本海に面していることからも分かるとおり、縦に長い。そんな兵庫県五国のうち、最北なのが但馬エリアで豊岡市・香美町・新温泉町・養父市・朝来市から成る。今回紹介する「生野高原カッセルRVパーク」は但馬の南玄関口、兵庫県北中部にある朝来市にある。
アクセスは関東方面からなら中国道・福崎ICから播但連絡道経由、もしくは山陽道・姫路東ICから播但連絡道経由で生野北第一ICより10分程度。手軽に登山が楽しめる「段ヶ峰」をはじめ、行楽地や避暑地として自然が満喫できる標高600mの生野高原に位置する。この辺りはゴルフ場や別荘地、グランピング施設などもあり、クルマの窓を開けると緑豊かで澄んだ空気が車内へと入り気持ちを落ち着かせてくれる。
1979年創業の老舗オーベルジュに併設
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パークは宿泊できるレストラン「生野高原オーベルジュ KASSEL(カッセル)」に併設。ドイツのメルヘン街道の首都とも言われる「カッセル」という街から命名されたレストランは、ヨーロッパを感じさせる佇まい。「オーベルジュ」とは、郊外のレストランでシェフがその土地の食材を使って食事を提供するという宿泊施設を備えたレストランを意味しており、食事はもちろんのこと宿泊も可能となっている。
パークの開設は2022年6月。オールベージュの前にある小さな丘にあり、区画は全6区画を用意。1区画のサイズは長さ7m×幅4m。水場が備わるほか、トイレも男女別に1つずつ装備。車外調理はコンロやIHクッカーなどの使用はいいが、焚き火や直火などは不可。入浴施設に関しては有料の貸し切り風呂となっているのでゆったりと疲れが癒やせる。さらにパーク内にWi-Fiが備わっているのも嬉しいところだ。ちなみにここは第1回RVパークアワードでインフルエンサー部門のブロンズ賞を受賞している。
パークの魅力はなんといってもカッセルでしか味わえない食事。ブランド牛のルーツとも言える但馬牛神戸肉の指定店であり神戸肉や但馬牛が味わえるのはもちろん、ほかにも四季折々の地場のこだわり抜いた⾷材を使⽤。シェフがこだわるグランド・キュイジーヌの伝統技法をベースに、和の⾷材や調理法を取り入れた創作料理「フレンチジャポネ」は素材を活かした優しい味わいと評価も高い。レストランでのランチ、ディナーはもちろんのこと、テイクアウトメニューもあるので車内で楽しむことも可能。
宿泊日の夜はレストランが満席だったこともあり、テイクアウトメニューのステーキ重とお土産用の燻製5点盛りを事前に予約。出来上がったばかりの料理を受け付けで受け取り、車内でひとり舌鼓を打ちその余韻に浸りながら寝床に入った。また翌日もレストランでのランチを予約し、朝食と兼ねてカッセル特製ハンバーグランチを堪能。パーク利用者の9割以上の人がレストランもしくはテイクアウトを利用するというのも納得の美味しさで、大満足しつつ周辺の観光地を巡ったのだった。
最高級神戸牛100%ハンバーグランチコース(4200円)。口の中に溢れる肉汁と旨味で天にも昇る思いになれる一品。スープにサラダ、パンまたはライス、手作りプレッツェル、デザート、カフェも付いている
事前に予約しておけばテイクアウトの利用も可能。但馬牛ステーキ重(1800円)に、自家製おつまみ燻製5種盛り合わせ(1900円)。ドリンクも予約が可能
「日本のマチュピチュ」竹田城にも近く周辺観光も充実
朝来市といえば鉱山の町としても知られた場所。明治維新後、朝来市生野銀山に神子畑鉱山、養父市の明延鉱山は日本初の官営鉱山として、当時最先端だった西洋の鉱山技術を導入。近代化の模範鉱山の第1号として日本の近代化を牽引した。日本初の機械式製錬技術をはじめ、トロッコ軌道の敷設、日本最初の鉱山学校の設立など、近代化日本の鉱山開発の元祖の地。これら鉱山から飾磨港(現・姫路港)までを結ぶ73kmにも及ぶ道は鉱産物、採掘・製錬に必要な資材、生活物資を届ける馬車を届けるために使われ、現在は「播但貫く、銀の馬車道 鉱石の道」として日本遺産にも選ばれている。
朝来市に来たのなら、こうした近代産業遺産に触れられる「生野銀山」「神子畑選鉱場跡」「志村喬記念館」に是非とも立ち寄りたい。
また、「日本のマチュピチュ」「天空の城」なとどとも呼ばれる、竹田城跡は日本の100名城としても有名。9〜11月は雲海が見られることもあり、その幻想的な景色を見ようと多くの人が訪れる。ほかにも生野銀山湖に黒川温泉などドライブがてら立ち寄りたくなるスポットも数多い。
買い物についてはパークが高原にあるため、道中で済ませておくのがお薦め。「道の駅フレッシュあさご」や「道の駅あさご」などが市内にあるほか、生野駅前・国道312号沿いに「ローソン生野インター店」があるので、車内調理などをする人はこれらをチェックしておきたい。
ここオールベージュは見晴らし抜群の景色に加え、清々しい空気に美味しい料理が楽しめたのはもちろん、貸し切り風呂も利用し食事も癒やしもフルコースで十分過ぎるほど。さらに、ここ朝来は星空の名所としても有名で、就寝前にアウトドアチェアに座りながら眺めた夜空に輝く星々にはただただ感動のひと言。自然の豊かさをたっぷりと感じつつも、深夜に突然現れたシカの親子にはド肝を抜かされたことも付け加えておこう。
生野銀山(兵庫県朝来市生野町小野33-5/TEL:079-679-2010)
807年に銀が出たと伝えられ、室町時代の1542年には但馬守護職の山名祐豊が銀石を掘り出したのが開坑の起源と言われている
記念館は「朝来市旧生野鉱山職員宿舎」の一部で、現存する4棟の建屋のうち甲7号、8号、9号の3棟は官営鉱山であったころの明治9年に官舎として、19号棟は明治29年に三菱の社宅として建てられた。日本近代の生活様式を残す貴重な遺構となっており、戦前・戦後に活躍した名優「志村喬(しむら・たかし)」さんの生家(明治9年建築)も甲社宅のひとつだった。館内には志村さんの生い立ちや代表作、遺品などを展示している
800年頃に鉱山として開拓された神子畑は15世紀頃から採鉱が盛んになり、皇室財産として宮内庁の管轄なったが、1896年に三菱へ払い下げられた。1919年に明延鉱山の鉱石を選鉱する「神子畑選鉱場」に生まれ変わり、規模、生産量ともに東洋一とも言われた。現在はコンクリートの基礎のみが残り、その歴史を今に伝えている
/TEL:079-674-2120)
標高353.7mの山頂に建てられた山城。本丸、二の丸、三の丸、南二の丸、東丸などが配置された梯郭状(ていかくじょう)の縄張りが、虎が伏せた姿に見えることから、虎臥城(とらふすじょう)の別名もある。1443年ごろに但馬守護山名宗全が太田垣氏に命じて築城。その後、1585年に赤松広秀が入場するものの、1600年の関ヶ原の戦いで敗北し自害。江戸幕府の方針により同年廃城となり、城は取り壊された。現在は国史跡に指定されており、円山川の川霧による幻想的な景色から「日本のマチュピチュ」「天空の城」などとも呼ばれている
1993年4月、道の駅がはじめて登録された103駅あるうちの1つ。冬は幻のねぎとして知られる「岩津ねぎ」が購入することができる
播但連絡道路の朝来サービスエリア内にある道の駅。一般道からのアクセスも可能で、農産直売所に加工食品が充実しているほか、レストランも人気