キャンピングカーで「日本列島RVパークの旅」⑱RVパーク城崎温泉いなばや(兵庫県)
キャンピングカーや車中泊仕様車でどこに泊まれるのかというと、道の駅や有料道路のパーキングを連想しがち……。でもこれらの場所は、休憩のための仮眠はオッケーでも宿泊できる場所ではありません。そこで利用したいのが、RVパーク。キャンピングカーの製造メーカーやディーラーで構成される日本RV協会が設置を進める「快適で安心して車中泊できるスペース」のことで、入浴施設やトイレ、電源設備などが備わります。実際にオートキャンパー WEB編集部が全国各地のRVパークに実際に泊まってその魅力をお伝えします。なお、2024年10月18日現在、日本全国にRVパークは475カ所ほど存在しています。
奈良時代より続く温泉地「城崎温泉」
兵庫県には有馬・湯村・城崎といった有名温泉が数多くある。今回紹介する「RVパーク城崎温泉いなばや」は施設名からも分かるとおり、豊岡市にある城崎の温泉街そばにある。
パークを紹介する前に城崎温泉を簡単に説明すると、奈良時代の養老元年(717年)に僧侶である道智上人が城崎に訪れた際、病気に苦しむ人々を救いたいと祈願したところ、夢の中で老人からお告げを受け1000日もの間お経を唱え続けたことで満願し、温泉が湧き出たという(720年)のがはじまり。江戸時代の町人文化である温泉番付けでは西の関脇に選ばれるほどの人気だった。
また城崎温泉は志賀直哉の短編小説「城の崎にて」の舞台としても有名。古今和歌集など平安時代から歌に詠まれているほか、島崎藤村や司馬遼太郎、与謝野晶子などの文人にも愛された温泉街は文学のまちとしての側面も持っており、当時から変わらない街の風景は訪れる人をノスタルジーな気持ちにさせてくれる。
ここでの正装は浴衣に下駄。街なかに響く下駄の音も風景と相まり懐かしさを感じる
2020年に開湯1300年を迎えた、長い歴史がある城崎温泉。ここは7つの外湯巡りが有名で大谿川(おおたにがわ)に沿った温泉街にはいくつもの橋梁とともに川沿いに栁が植えられ昔ながらの風情が感じられる。
際に温泉街に踏み入れると街中では「カラン、コロン」という心地よい音があちこちから聞こえてくる。ここ城崎温泉では「浴衣に下駄履きが正装」と言われ、浴衣姿で湯巡りを楽しむ人々と風情ある町並みが相まってタイムスリップしたかのような錯覚さえ覚えてしまう。
外湯の泉質はすべて同じでナトリウム・カルシウムー塩化物・高温泉で、神経痛、慢性消化器病、疲労回復などに効果があると言われている。気になった外湯だけに入るのもいいが、どこも大人800円という料金なので、日帰りで外湯巡りを楽しむなら1500円で入り放題の1日券「ゆめぱ」を購入するのがお薦めだ。
パークから温泉街まで徒歩でわずか5分と、湯上がりの散歩にもちょうどいい
温泉街から徒歩5分という立地のよさ
そんな温泉街から徒歩5分に位置するパーク。アクセスは北近畿豊岡道(国道483号)や舞鶴若狭道、京都縦貫道、山陰近畿道などを経由し豊岡市へ。JR城崎温泉駅の前を通る県道9号沿いにある。
ここは老舗酒店に併設されているパークで、酒屋の16代目となる細田正平さんが運営し母のゆうこさんが手伝いをしている。細田さん自身が車中泊好きだったこともあり、2022年4月にオープン。開設時はコロナ禍で運営も大変立ったそうだが、県内のキャンピングカーユーザーがたくさん訪れてくれたことで乗り切れたそう。ここは第1回RVパークアワードでは一般ユーザー部門のゴールド賞を受賞している。
1区画は通常が長さ6m、幅5mで当初は全7区画だったが、現在は区画サイズの異なる最大12区画を用意。さらに昨年よりパークの横には自宅の蔵をリノベーションした1棟貸しの宿泊施設「ゆっ蔵」もオープン。ここはシャワーにトイレ、キッチン、居間、寝室に加え、バーベキューができる庭まであり、大人数での旅やオフ会などで併用する人も多い。
施設の特徴はなんといっても酒屋に併設されていること。チェックインもここで行なうほか、取り揃えるお酒はワインや日本酒をはじめ地元である兵庫県の銘柄ばかり。店内は角打ちスタイルになっており、愛車を止めてチェックインしたらすぐに一杯を楽しむ人も多いとか。店舗は18時までだが事前に予約をしておけば、小さなプラスチック容器に入れた日本酒飲み比べセットなども用意してくれる。
店舗兼パークの受け付け。ここは角打ちスタイルになっており、買ったお酒を店内で飲むことも可能
店舗横にある建物はトイレや洗面所、炊事場になっており、有料だが洗濯機に乾燥機まで備わっている。またダンプステーションがあるのも心強い。
食事に関しては車外でのコンロ&IHを使った調理が可能。ただし、焚き火や炭火料理などは不可。湯巡りしながら温泉街にいくつも飲食店があるので好みのお店を探すのもありだが、パークでは数軒の近隣飲食店からの出前サービスもあり但馬牛や松葉ガニを使った地元料理からラーメンや中華など幅広いメニューがパーク内で味わえるのも便利だ。
大型スーパーなどはないものの、城崎温泉駅周辺には日本海の新鮮な魚介がそろう鮮魚店に但馬牛取り扱い店、小さなスーパーやコンビニなどもあるので自炊派が困ることもないだろう。
流しやレンジ、ケトルに加え、有料で洗濯機や乾燥機も使える
山陰津居山港から届いた新鮮な海産物を提供。地元の松葉ガニや香住ガニをはじめ、エビやイカなどその日に水揚げされたものが並ぶ。店内で食べることも可能
/TEL:0796-20-3526)
昭和21年創業の地元でも人気の製菓店。本店とは異なり、白玖では団子と大福を販売。とくに季節ごとに異なるフルーツ大福は絶品でオススメ!
パークではお食事処山よし・宮政ラーメン・中華料理チャイナといった近隣飲食店からの出前サービスも用意。チャイナのあんかけ炒飯は心もカラダも温まった。またパークに事前予約しておけば翌日のモーニングセットも提供してくれる
温泉で癒やされるもヨシ。周辺の観光スポットを巡るのもヨシ
城崎は温泉街から北へ向かえば15分ほどで日本海へと出ることができる。近くには竹野浜海水浴場をはじめいくつか海水浴場が点在し、夏場は海水浴客出賑わいをみせるほか、わんこ連れ専用の青井浜わんわんビーチなど遊べるスポットも多い。ファミリーに人気なのは体験型水族館の城崎マリンワールド。史跡なら山陰海岸ユネスコ世界ジオパークに登録され、世界の地質遺産100選にも選ばれる玄武洞もぜひとも立ち寄りたい場所。ちょっと足を伸ばすなら、但馬の小京都とも呼ばれる城下町出石(いずし)に行くのもお薦めだ。
周辺に観光スポットがあるだけでなく、温泉街をのんびりと散策しつつ湯巡りを楽しむならその拠点にぴったりのパークがここ「いなばや」。歴史はもちろん、楽しみ方なども細田さん親子が親切ていねいに教えてくれるし、フレンドリーで話も楽しい。チェックアウトが14時と遅めなのも嬉しいところ。次は30ウン年ぶりに昔読んだ「城の崎にて」を片手にもう一度ゆっくりと訪れたいと思うのであった。