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昭和の国産キャンピングカーに思いを馳せる【浅草武シートのホリデーキャンパー】

時は昭和40年代、モータリゼーションの到来とともに、国産自動車メーカーがこぞってキャンピングカーという「グレード」をラインナップしていた時代があった。そんな当時に製作され、今日に現存する国産キャンピングカーを紹介する、ニューキャンパーならぬ、”オールドキャンパー”なる連載を思いついた。ただ、当時のキャンピングカー、残存数がめちゃくちゃ少ないのだ。だから皆、存在を忘れかけている……。温故知新?の第2回目は、浅草武シート(武キャンパー)が製造したホリデーキャンパーだ。

昭和40年代の国産キャンピングカーを求めて

軽自動車からマイクロバスまで、キャンピングカー百花繚乱のこの時代において、過去を顧みることはまだ一般的ではないようだ。が、今日までさまざまなこの「移動式お家カー」が誕生するなかで、昭和40年代ころのそれを振り返るのはなかなか困難になってきた。当時もキャンピングカー は高価だったし、ボディの防錆に関しても今とは考え方が異なるし、NOx規制の影響もあって廃車の運命をたどった車体も多いのである。

武キャンパーのホリデーキャンパーとは?

昭和53年のマイナーチェンジによりグリルやバンパー取り付け位置などを変更

マイナーチェンジ時に追加されたディーゼルエンジンSD22を搭載

ここに紹介する1978(昭和53)年型のキャラバンも、当時の生き残りだ。フロントにスペアタイヤを背負ったワーゲンのレイトバス風のルックスは、戸外生活がどういうものかを連想しやすいキャッチーさだ。ちなみに、浅草武シートと言えば、当時の石原プロモーションのサロンカー製作や、昭和40年代に第一次オートキャンプブームをけん引した特殊車両メーカーなのである。

1970年には、第一回オートキャンプショーが催され、そこには、当然日本ではじめてキャンピングカーを製作した浅草武シートの姿もあった。トヨタハイエースワゴンデラックス(PH10G)をベースとしたそのキャンパーは、FRPのルーフボックスを備え、水と食料だけ積み込めば、戸外生活を行うことができるとうたっていた。車両代別の改造費は60万円。

1972年になると、浅草武シートはこのハイエースキャンパー(武キャンパーブランドとして)で東京モーターショー(現在のモビリティーショー)にも出展する。セントラル自動車(トヨタ自動車向けのの特装業者)のハイエースコミューターキャンピングカーや、三菱が製作したのデリカ75キャンピングバンに並び、国産キャンピングカーメーカーとして気を吐いていたのだった。そのほか、東急自動車などがトレーラー型の「スバルキャンパーO(オー)」を出展していた。

ホリデーキャンパーは、ウエストファリアを意識していた?!

キャラバンロング標準ルーフのバンをベースとして製作

それまでのFRPボックス方式による天井のベッドスペースは、VWのウエストファリアキャンパーよろしくポップアップルーフとなり、全高を押さえて走行性能を向上しているほか、スペアタイヤの配置も、同時期のウエストファリアをオマージュしたもののようだ。

ポップアップルーフの前部は、ちょっとした物が積めるような構造。車体左後ろに収納庫を配置しているVRE20型=バンベースながら、クオーターウインドウは右側のみマイクロバス用のスライド式ウインドウに変更されて開閉が可能

浅草武シートは2000年を過ぎたころに解散、再構築が行われ(‘04年7月にタケ・クラフトコーポレーションとなり再出発を果たした)、現在も特殊車両メーカーではあるが、当時のことを知る人間はいないそうだ。また、独立したメンバーによって興されたという城東特殊自工(同じく特殊車両製作メーカー)へも問い合わせたが、やはり昔の資料はまったく残っていないとのことである。

走行時は、3人がけのシートふたつが前方を向く仕組み
助手席の真後ろには、大型のシンクが備わる。フット式ポンプによって蛇口から水が出る
純正内装色同様の明るい茶色で統一されたセカンドシート以降の居住空間

シートは座面や背もたれがリクラインする方式。ドライバーズモードからベッドモードにもワンタッチで展開可能

コンロはコールマンのガス式が2口備わる
純正のルームランプから取り出されたマップランプ がワイルドな雰囲気?を醸す

リアステップはキャラバン救急車用のものを採用。フックが追加され、バンジーコードなどで収納スペースとしても活用可能な作り。スペアタイヤがフロントに移設されたのは、この特大バンパーのせいかもしれない

しかしながら、半世紀も前の国産キャンピングカーが今なお残り、それを今日、見ることができるだけでも幸せだと思うべきだろう。こういった特装車の多くはその特殊性ゆえに製作数が少なく、自ずと残存数も限りなくゼロに近いのだから。

*新連載「国産OLD CAMPER」では、取材車両を募集中です。昭和40~50年代に製作されたキャンピングカーをお持ちの方は、AUTOCAMPER WEB(ac@yaesu-net.co.jp)編集部までぜひご連絡ください!

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