昭和の国産キャンピングカーに思いを馳せる【セントラル自動車工業 ハイエースコミューターキャンピングカー】
時は昭和40年代、モータリゼーションの到来とともに、国産自動車メーカーがこぞってキャンピングカーという「グレード」をラインナップしていた時代があった。そんな当時に製作され、今日に現存する国産キャンピングカーを紹介する、ニューキャンパーならぬ、”オールドキャンパー”なる連載を思いついた。ただ、当時のキャンピングカー、残存数がめちゃめちゃ少ないのだ。だから皆、存在を忘れかけている……。第1回目は、トヨタの完成車や特殊用途車の製作を行っていたセントラル自動車工業のハイエースコミューターキャンピングカーだ。
ハイエースコミューターキャンピングカーとは?
車体色は乗り換えられ、サビもなく奇跡の1台だ
新車時はえんじ色と白のツートーンカラーだったようだ。ホイールはヨコハマ製のアルメックス
現オーナーの酒井さん。福島県いわき市で自動車店フルハートを経営する。ハイエースのキャンピングカーやバニングの歴史にも詳しい
メーカーが真剣に作ったキャンピングカー!
昭和40年代、オートキャンプブームが興り、各メーカーから様々なキャンピングカーやキャンピングトレーラーが発売された。初代のハイエースからモデルラインナップに加わったこのキャンピングカーは、1969年(昭和44年型)12人乗りのコミューターをベースとして製作され、各種自動車ショーに出展されただけでなく一般販売も行われた。当時、おもちゃのトミカにもこの「ハイエースコミューターキャンピングカー」のラインアップがあったことからもキャンピングカー人気が分かるだろう。
ただ、現在の価格にすれば、1000万円を優に超える車両価格で、誰しもが購入できるクルマでなかったことや、ボディと樹脂パーツの接合部など、防錆に関して処理が確立されていなかったこともあり、なかなかにして維持管理は難しかった。そんなこともあり、当時の国産キャンピングカーは今日まで残るモデルはほぼ皆無といっていい。
セカンドシートとサードシートで構成される広々としたダイネット(居間スペース)フリップダウン式左シートを下ろすとさらに多人数がくつろげる。ご子息もご満悦?!
しかし、今ここに、ほぼ当時のままのセントラル自動車工業製のキャンピングカーが残っていた。しかも!ハイエースのモデルチェンジに伴い、2代目となったハイエースコミューターキャンピングカーである。RH41Bというハイエースコミューターをベースとしたこのキャンピングカーは、1979年(昭和54年)に新車で購入した初代のオーナーが生涯所有していたもの。現オーナーが遺言で譲受け、動態保存に努めている。
このハイエースコミューターキャンピングカーは、屋内保管の上、一度、外装を再塗装されていることも功奏し、45年前とは思えないほど綺麗な状態を保っている。ルーフ上にボックスを架装して室内を拡張するというオーソドックスな手法(昭和40年代当時)で製作されているが、室内は想像以上に広い。彩光や換気扇も効果的な位置にレイアウトされていることもあるが、なかなかにして快適だ。
ベッドマットを兼ねるセカンドシートは特許を取得!
セントラル工業製「前向、後向座席、およびベッド装置」特許を取得している。シート台座内には燃焼暖房装置を備え、通風口が備わる
リアゲートからの車内。車内への出入りは、左スライドドアから
車体前方にキッチンをレイアウトし、車両後部までをダイネット(居間スペース)とする室内は、就寝時にここをフルフラットにベッド展開することも可能だし、ルーフボックスに格納されているマットを使ってハイマウントベッド仕様にすることも可能と、レイアウトパターンも豊富だ。
ワンタッチでフルフラットなベッドスタイルにもなる特許を取得しているセカンドシートの展開方法が、ウインドウに貼られている。背もたれを倒すだけの簡単アクションだが、ベッドにも、ドライビング時の前向きシートにもなる
開放的な車内は、ハイエースのサイドウインドウをそのまま生かした仕立てのため!
この開放的な居住空間を作り出しているのは、ハイエースのウインドウをそのまま生かしている点と、上部収納庫を持たないところだ。今日のキャンピングカーの使い方である観光や道の駅&RVパークでの車中泊といった使い方と比べると、当時は山や河原、キャンプ場での戸外活動=オートキャンプという使い方が主。収納庫は外からアクセスできる方がよかっただろうし、上部収納庫をもたないのは、当時のハイエースの重心位置が高くなってしまうことを防ぐ目的があったかもしれない。FRPのボックスやルーフの許容荷重とか、いや、もっとほかにもきっと。
リアゲートを開くと、発電機などが収まる収納庫が備わる仕組み。収納庫の上にはポットが!転倒防止装置付きの電動ポットがまたいい雰囲気だ
……いずれにせよ、今につながる「キャンピングカー」に思いを馳せるのも面白い。
*新連載「国産OLD CAMPER」では、取材車両を募集中です。昭和40~50年代に製作されたキャンピングカーをお持ちの方は、AUTOCAMPER WEB(ac@yaesu-net.co.jp)編集部までご連絡ください!