完全車検対応な車中泊仕様車、実際の使い心地は?新型セレナやキャラバンなど3台をテスト
日産自動車には「日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社(NMC)というグループ会社が存在し、2つの領域で活動している。ひとつは本格的なモータースポーツチームの運営やレースやチューニング用パーツの開発などを行なう「モータースポーツ」。そして、もうひとつが日産自動車やサプライヤーとの強力なパートナーシップによってだれもが安心して楽しめる魅力的なクルマを製造する「カスタマイズ」だ。今回はそんなNMCが提案し全国の日産ディーラーが販売するマルチベッドシリーズ3車種をシチュエーション別に実際に使ってみる。果たしてメーカー製の車中泊モデル、実力やいかに!?
完全車検対応の車中泊仕様「マルチベッド」シリーズとは?
日産自動車のラインナップのなかで、車中泊旅に人気なのが車内スペースにゆとりのあるキャラバン、セレナ、NV200バネット。
キャラバンは商用車として働く人々を支えるほか、その広さからキャンピングカーのベース車としても人気。セレナは2022年にフルモデルチェンジし、運転支援技術「プロパイロット」を全車に標準装備するほか、e-POWER搭載モデルも用意。言わずもがな乗心地のよさと安全性の高さによりミニバンの売れ行きランキングでも上位となっている。NV200バネットはコンパクトボディに広い車内、そして取りまわしのよさなどが魅力だ。
これら3車種には車中泊仕様の「マルチベッド」と呼ばれるグレードが用意されており、日本全国にある日産のディーラーで普通に購入することができる。マルチベッドは車両ごとに専用設計されたベッドシステムに加え、セカンドシート以降にはフロアパネルも備わる。フロアパネルは表面加工が施されており、荷室フロアの汚れや水濡れも拭き取れるのはアウトドアシーンにはありがたい。
ベッドのほうはどの車種も使い勝手の良さを考えられており、手間要らずで展開できるため、出先や旅先でベッドモードやテーブルモードなどにセットでき、休憩(睡眠)・食事・オフィスなどとして活用ができる。もちろんメーカー直系のカスタマイズブランドが手がけているだけに品質についても純正のようなクオリティで、車検・整備などで不安になることもない。
写真はキャラバンマルチベッド。跳ね上げ式のベッドとフロア加工が施されている。ベッドマットの生地は運転席と同じものを使用しており、こういった素材を扱えるのもメーカー直系ならではといえる。
セレナマルチベッド→デイキャンプにピッタリだった
セレナ マルチベッドは5人乗車、ベッドは2人が寝られる。この設定を生かすべく荷物を積み込みデイキャンプに出かけてみた。ほかのクルマならすぐに現地での積載性能やベッド展開のテストの話になりそうだが、セレナはバリバリの乗用車。プロパイロットをはじめとした最新の運転支援技術も搭載されているので、運転手も他の乗員も道中の移動が快適。これはミニバンベース車の大きな利点だ。
こうなるとがぜんフットワークも軽くなり、道中の道の駅で買い物をしたりランチに出かけたり。寄り道を楽しみながらキャンプ場に向かった。
キャンプ場に着いたら、テントやタープの設営もなくサッと道具を下ろして終了。マルチベッド仕様なので、ベッド展開すればいつでも車内で休むことができるので心強い。車の中に一部屋があることで、普段はもっと準備で時間を取られて苦労するキャンプもサクッと楽しめるので、これなら遊びに行く回数も増えるというもの。
ベッドのサイズは2120×1320mmで、ベッドと天井のクリアランスも830mmが確保されている。ベッドマットは4層構造で寝心地と耐久性を両立、生地は防水仕様のものを採用しているから食べ物や飲み物が多少かかっても安心だ。
セレナマルチベッドのベッドを展開してみる
セレナマルチベッドのベッド展開はとても簡単。セカンドシートの背もたれを後ろに倒し、そこにベッドマットをはめるだけ。
こんなに簡単にベッドになる理由は、車両後部のタイヤハウス付近にある。普通のセレナは3列シートだが、このセレナ マルチベッドは3列目のシートを取り外し、そこにベッドを置くためのフレームをあらかじめ据え付けてあるのだ。もちろんこの状態で車検もOK。
そのため乗車定員は7人から5人に減るが、かわりに車両サイズめいっぱいの広大なベッドフロアを簡単に作ることができる。ベッドを使わない時でもマットを渡しておくことで、リアが上下に分割された収納庫として使え、積載能力もアップ。
日常使いとしてもパフォーマンスの高いセレナにベッドをプラスすることで、休日にもまた違った楽しみがプラスされそうだ。
▼セレナマルチベッドの使い方はこちらの記事が詳しい
キャラバン マルチベッドはベッドアレンジの多彩さが魅力
ハイエースと並ぶハコ車の代表格・キャラバンでは、3人+自転車も積んでキャンプという、人も荷物もモリモリのシチュエーションを試してみた。 キャラバンはクラストップの室内長を持ち、セカンドシートを残したまま自転車を積むこともできる。マルチベッドシリーズはフロアパネルも施工されるので、汚れや水濡れにも強く、床面がフラットなのでそれほど気を遣わずざくざく物を積んだり降ろしたりできるのが良い。
ベッド部分は跳ね上げ式の二の字ベッド。シンプルなつくりに見えるが、意外と展開にバリエーションがある。まずは通常の二の字展開。ベンチとして使うもよし、独立したベッドとして使うもよし。ベッドのフレームはあらかじめ車体に埋め込まれているナットに固定されているので強度もしっかりしている。ベッドマットは厚み50mmで座り心地&寝心地も良好。
ベッドの間にマットを渡せばフルベッドに。ベッドは1510mm×1760mmの広さがあり、大人2人でも十分なサイズ。
オプションの脱着式テーブルをつければお座敷モードにも。
キャラバンマルチベッドのベッドを展開してみる
キャラバン マルチベッドの左右のベッドの展開はワンタッチ式のベルトを外して、脚部分にあるレバーを押して引き出すだけとたったの2ステップ。説明写真も1枚で済んでしまう簡単さだ。
キャラバン マルチベッドのベッドを降ろす。女性でも問題なく扱える重さだ
積んでいた荷物を降ろしたら2分でくつろぎゾーンが作れるこの気軽さは、遊びに行くハードルをぐっと下げてくれる。
ほかにもバックドアテントやバックドアタープのようなキャンプ好きのためのオプションや、車中泊がより快適になるプライバシーシェードに車内カーテン、サイドマルチパイプにツインアタッチメントといったアクティビティの荷物の整理に便利なアイテムも用意されているので、自分のスタイルに合わせて拡張していくこともできるのも魅力といえる。
▼まだまだあるキャラバンマルチベッドの室内アレンジ例はこちらから
自分のスタイルに合わせてパーツも豊富なNV200バネット マルチベッド
NV200バネットは軽自動車より1まわり大きい程度のコンパクトボディ。ここにベッドもついているのだから、1人で思い立ったらどこへでも行ける旅の相棒として最適だ。ということで、渓流釣りとワーケーションという1日に付き合ってもらった。
この日は深夜に起床し、満を持して渓流に向かったが釣果ゼロ……。しかし狭い道でも問題なく入っていけるNV200バネットのサイズは趣味グルマとしてポテンシャルが高い。大型車だと不安になるような道でもスイスイ入っていけるのだ。
キャンプ場では、車内で仮眠した後に、今度はオンラインミーティング。脱着式テーブルをセットし、ノートPCを起動させれば、先ほどまで寝室だった車内は即移動式の事務所に早変わりする。
NV200バネット マルチベッドは専用オプションパーツが多いのも魅力。この写真にも脱着式テーブルをはじめ、バックドアのタープ、頭上のサイドマルチパイプや、それを使ったロッドアタッチメントなど様々なオプションが映りこんでいる。なかでもマストと言い切りたいのは脱着式テーブルだ。
例えば車内でくつろぐときに飲み物をちょっと置けるスペースがあるのとないのでは使い勝手が大幅に違う。マットの上にトレイなど置く手もあるし、マルチベッドはフロアが加工されているので、多少の濡れも許容範囲だが、テーブルのあるなしは生活の整い方に直結する。
NV200バネット マルチベッドのベッドを展開する
NV200バネット マルチベッドは、セカンドシートの背もたれを前に倒し、リアの跳ね上げ式ベッドの脚を出してフロアに降ろせば完成。NV200はバンとワゴンの2タイプあり、より荷室が広いバンタイプのベッドサイズは1470mm×1725mmとなる。
今回のように1人旅なら、片側のみベッドにしてあとはテーブルと荷物置きのスペースにしておくと使い勝手がいい。
▼NV200バネットマルチベッドについて詳しくはこちら
ここまで、3台のマルチベッド仕様を見てきた。いずれも全国の日産自動車ディーラーで購入でき、車検もOK、自動車メーカー直系のファクトリーが作る信頼性の高いモデルだが、持っている魅力はそれぞれ異なる。乗せたい人数ややりたい趣味に合わせて選ぶといいだろう。